フレンチのDNAを大切にした二ツ星モダンフレンチOdette

ミシュラン二ツ星、そして今年のアジアのベストレストランで初登場のレストランとしては最高位の9位にランクインするなどの快挙を遂げているオデット。フランスのMichel Bras、ロンドンのThe Greenhouseなどで修業を積み、シンガポールのJaanの2代目シェフを経て自らのお店をオープンした、Julien Royerシェフによるレストラン。

2015年11月に、ナショナル・ギャラリーのクラッシックで優雅な建物にオープンしました。

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まずはアミューズ。

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定番の、コンテチーズのスポンジにごく薄くスライスしたクルミを振りかけはちみつを垂らしたもの。コクと深みのあるコンテチーズの味わいを、とっても軽やかにいただけます。
炭のフェタブレッドは、アンチョビのクリームを詰めて、イタリアンパセリのソースとともに。
海苔を使った、チーズ感たっぷりのタルト生地に、フレッシュミルクのクリーム、そして小さなグリーンピース。

そして、同じく定番のアミューズ、マッシュルームのサバイヨンにソバのパフをかけたもの。

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マッシュルームの出汁を注ぐと、サバイヨンがふんわりとふくらんで泡立ち、いかにも美味しそう。目の前で仕上げる視覚効果も狙った形になっています。
バターの甘い香りが漂うマッシュルームのブリオッシュを添えて、マッシュルーム尽くしのメニュー。
シャンパンは、ハウスシャンパンのアンリ・ジローをいただきましたが、サバイヨンのコクを酸のはっきりとしたシャンパンですっきりといただける組み合わせでした。

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パンは、トリュフを練りこんだエスカルゴ型のブリオッシュに、ライ麦のサワードーブレッド。オリーブを練りこんだフォカッチャ。
こちらに、ボルドー産の新鮮な味わいが生きた無殺菌のバターと、自家製のポークラードにパンチェッタを細かく刻んで振りかけてあります。
Julienシェフが生まれたふらんす中南部のAurillacでは、料理にラードを使うのはとても一般的。そんなふるさとの味をそのままに提供していますが、シンガポールの、特に中華系の人たちはこの豚の脂が大好き。とても好評だそうです。

Hokkaido Uni
Trandheim bay scallop Mussel cloud Oscietra caviar

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北海道産のウニとラングスティーヌ、角切りのりんご、ライムとオリーブオイルを添えて。
ムール貝の出汁が生きたクリームに、オシェトラキャビアとチャイブ。Julienシェフのシグネチャーメニューです。
クリームははっきりとコクのある濃厚なもので、ウニのコクを強調します。
クリーミーな味だけれども、トゲに囲まれたウニ。その形が味そのものになったら、こんな感じになるのかな、なんて思わせてくれる、素敵なプレゼンテーション。

Saba Printaniere,
Rhubarb nage, pickled onions, Fennel

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直訳すると「鯖の春」。日本の魚介類を多く使っているというJulienシェフ、北海道産の鯖をオリーブオイルに漬け込み、ルバーブのナージュ(野菜の出汁)で仕上げてあります。どこか、コールドプレスジュースのような、フレッシュ感のある甘酸っぱく冷たいナージュと、新鮮な鯖が意外な相性のよさ。日本の〆鯖のような、甘酸っぱさと新鮮な鯖のコンビネーション。でも、味の構成は似ていても、日本の食材をアクセントに使うわけでなく、完全にフレンチの食材で仕上げたフレンチの一皿になっています。甘酸っぱさを強調する玉ねぎのピクルスと、鯖にも合う甘い香りのフェンネル、それを緑の味わいで繋ぐオリーブオイル。ルバーブのナージュに、ほんの少しだけぶどうのニュアンスを感じたのでお聞きすると、わずかな分量だけポルト酒を入れているのだそう。深みの中に、少しだけ収斂性のある舌触り、マスタードのプチプチとした食感と味わいが甘すぎないバランスと奥行きを与えていて、べたっとした甘味ではなく、とても気に入りました。

Trombetta Zucchini “Plein Sud’
Goat cheese, Zucchini flower, Almonds

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ズッキーニを使ったベジタリアンの一皿。”Plein Sud’とは、真南、という意味。南仏の太陽の陽差しを感じるような、温かな印象の一品。
お任せでお願いしたワインは、ミネラル感のあるシュナン・ブラン、Pithon-paille 2009。

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野生の蜂蜜のような、糖蜜のようなエイジングの香り、メープルシロップのような温かみのあるワインで、この南の温かみにうまく寄り添っている印象です。

ズッキーニの花は軽いフリットの下には、パスタ風に仕立てたズッキーニ。Julienシェフが目指すのは、今の時代に合ったモダンフレンチ。本物の味を伝えつつも、時代に合わせた油分や炭水化物控えめのフレンチを提供しています。昔だったら小麦のパスタを使うところなのでしょうが、今は糖質制限をしている人も多い時代。こんな風に工夫して、ヘルシーな野菜でパスタ気分を味わってもらう、という趣向。ズッキーにはほんのり軽く火入れをして、シャキシャキ感と共に甘味を引き出してあります。ヤギのチーズは、小さく切ってありますが、しっかりとした濃厚なコクのあるものを使って満足感を出しています。クミンが香る中東やモロッコなどで食べられているソース、ハリッサはを添えて。ピンクの花はアリッサム。ネギの仲間ならではのピリッとした辛味があり、美しさだけでなく、味のアクセントにもなっています。南仏らしい、ミントやバジルも、「真南」感を強調します。火を入れない、今の時期ならではの生のアーモンドの軽やかなコクと甘みも、サクサクとした食感とともに楽しめます。

Escargot ‘Gros Gris’ Tart
Organic egg yolk, Valetta ‘Dume Cesari’, Petit-pois

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エスカルゴのタルト。ごくごく薄い、オニオンフィロペストリーの上に、ブルゴーニュ産のエスカルゴ。ハーブバターで食べるのが一般的ですが、ニンニクとパセリのサバイヨンと、温泉卵状態になっているオーガニック卵の卵黄でいただきます。そしてグリーンピースを軽くしたニュアンスのある豆苗が卵黄とよく合い、さらにアスパラガスと、ネギの鋭さのある白いアリッサムで緑の印象を重層的に重ねて行きます。
上にはパフ状にした蕎麦が、オーブンでエスカルゴを焼いた時のような、香ばしい香りと食感のアクセントになっています。
そして、味のポイントになっているのは、ラード。濃厚な旨味で、海の旨味と山の旨味の両方でいただく一品でした。

Foie Gras ‘Comme un Pho’
Tomakomai Abalone, BBQ eel dashi, Yuzu

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そして、フォワグラ好きということもあるのですが、個人的に私がとても気に入ったのが、このフォワグラの一皿。シンガポールではOdetteでしか使っていない、というMaison Mitteault の上質のフォワグラの味を生かしたいと作った一品。
生のフォワグラを一口大に切り、その上にごく薄いアワビのスライスを載せています。そして、カツオと昆布の出汁に、スモークしたうなぎの骨を入れてとった出汁を注いで、その温度でほんのりとフォワグラを温めて食べるようになっています。
シャープな味わいのナスターチウムとミントに、甘い香りの木の芽とタラゴンでバランスをとって。
口に入れると、上のアワビが硬質な旨味を、そして下からフォワグラのとろける芳醇さが弾け、旨味とともに食感が楽しめる組み合わせ。日本の出汁の繊細な旨味だけで、ほぼ生のままのストレートな味わいを楽しむフォワグラ。「高い技術を使って、素材をより素材らしく食べてもらいたい」というJulienシェフ、この一皿も、フォワグラの一番ピュアな味わいを引き出したい、という思いがまっすぐに伝わってくる作りになっていました。
フォワグラのポワレにはポルト酒などの甘いソースがつきもの。焦がした表面の香ばしさを、同じ甘辛タレを使うスモークした鰻の香ばしさに置き換え、甘みを鰻つながりの木の芽、そしてフランスのアイデンティティを持ちつつ同じ甘い香りを持つタラゴンの香りに置き換える。そんな構成が心に浮かび、Julienシェフにお聞きしたら、まさにその通り、ということでした。

お話をお聞きしている中で、Julienシェフが何度も口にしていた言葉が、「comfort」。伝統と革新の中間に、心地よさがある、という意味だそうですが、同時に、ファインダイニングでありながらも、居心地の良さを大切にしたい、という意味でもあるよう。数口食べて終わってしまうのではなく、ボウルにたっぷりのスープは、そんなコンフォート感の表れのようにも思えました。

Steamed Atlantic Whiting
Petuis asparagus Girolles ‘Clou’ Hazelnuts

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魚は、Julienシェフが個人的にも大好きな魚という、ヨーロッパ産のタラの仲間、ホワイティング。しっかりと脂が乗っている魚を、中華と同じように蒸して脂っぽさを抑え、そこに鶏肉のジュで仕上げたジロール茸を合わせていただきます。蒸すことでカロリーを抑え、その代わりにたっぷりのヘーゼルナッツで油分のコクと香ばしさをプラスしています。甘く焼き上げたネギといい、少しアジア的なニュアンスを感じる一皿。

Pigeon ‘Voyageur’ en 3 Services
BBQ Breast, Confit leg, Liver parfait

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そして、Julienシェフといえば、というシグネチャーの鳩。フランス北西部、Plounéour-Ménez(プルネウール=メネ)産のものを使っているそうです。
合わせていただいたワインは、なんとレバノンのワイン、Chateau Musar。

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カベルネ・ソーヴィニョン、サンソー、カリニャンがそれぞれ33%というワインで、ヘッドソムリエのVincent Tanさんの、航空会社で働いている友人が探してきてくれたものだとか。ボルドー大学で醸造を学んだ作り手で、火山岩の砂質の土壌で育てたワイン。ちなみに、レバノンには6000年のワイン造りの歴史があるそうです。
1999年のヴィンテージ、カベルネらしい味わいとともに、濡れたウールや毛皮の匂いのような、少し動物性の香りがあって、鉄分の多い鳩を野趣溢れる雰囲気に仕上げてくれます。

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胸肉はローストして、モモ肉はコンフィに。レバーはクリームとともにパルフェに仕立ててあります。
胸肉は鉄分の印象がしっかりとあり、まるで生のようなしっとりとした印象にも関わらず、火はきちんと入っています。滑らかな肉質の濃厚な赤身の肉を、刻んだミントを混ぜ込んだクスクスでさっぱりと。

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モモ肉はプリプリした食感で、シンプルに、スモーキーなセヴェンスオニオンのピュレが添えられています。「自分の料理は、昔はもっと多くの要素を一皿に盛り込んでいたと思う。最近は特に、シンプルにすることができるようになってきた」とJulienシェフ。
手元に巻かれた紙には、「これは私の一番気に入っている部分。ぜひ手で食べてください」とJulienシェフからのメッセージが添えられています。レバーのパルフェにはパンチェッタとビネガーを入れてあり、なめらかなレバーのコクの中に、香ばしいスモーク香をまとったハツが入っています。

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チーズは、36ヶ月のコンテ、Julienシェフの故郷から届いたという、胡椒とニンニクの効いたクリームチーズ、大好きなウォッシュチーズとブルーチーズをいただきました。

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緑の若々しい香りのある、カベルネフラン、Domaine Guiberteau Saumur Rouge Cuvee Les Motelles 2007と合わせて。

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プレデザートはベイリーフとナスターチウムのフォームに、ミントのシロップ、緑の香りが生きたきゅうりと青リンゴのソルベはどこか寿司酢の甘酸味を感じるバランス。

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Lemon T’art
Meyer lemon curd, Sable Breton, Basil

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マンダリンオレンジとレモンの交配種だという、メイヤーレモンを使ったレモンタルト。「レモンよりも豊かな味わいになる」と語ります。バジルヨーグルトのソルベの中には、メイヤーレモンの実が入っています。そして、レモンカードとメレンゲ。レモンタルトの伝統的な構成を生かしつつ、軽い仕上がりにしています。

Douceurs

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柔らかい塩キャラメル、マンゴーのスフィアにフィンガーライムを乗せたもの、中がしっとりとしたカヌレ、アールグレイのソルベを抹茶チョコレートでコーティング、ライムのジェルを飾ったロリポップ。

フレンチのDNAを大切にしながらも、現代風に軽やかにアレンジされた料理が楽しめるOdette。
ちなみに、ディナーのゲストには、祖母Odetteさん直伝のレシピで作った、グロゼイユ(赤すぐり)のジャムがプレゼントされます。

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父母が農園を営み、自らも小さな畑で子供の頃から野菜を育てていたというJulienシェフ。裕福ではなかったけれども、素晴らしい食材に囲まれて育ったそう。祖母の名前をとったこのレストランには、そんな豊かな自然へのオマージュと、子供の頃からの幸せな食の記憶が刻まれているように思えました。それが、スタイリッシュな店内にも関わらず、訪れた人が、どこかくつろいだ居心地の良さを感じる理由なのかもしれません。

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■ Odette(オデット)
営業時間:ランチ 12:00~13:30(LO 、火曜〜土曜)、ディナー 19:00~21:00(LO、月曜〜土曜)、日曜・祝日休
住所:1 St Andrew’s Road, #01-04 Singapore 178957
電話: +65 6385 0498
アクセス:MRTシティホール駅から徒歩5分ほど